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課題

フランチャイズで事業拡大するときに留意すること 大阪北部を中心に10校舎を展開する学習塾の経営戦略室に所属しています。

近年少子化の煽りを受け生徒数が減少傾向にあるため、掌握エリアを大阪全域に拡大し、校舎の数を増やすことで生徒数の確保をしようと考えているのですが、正直なところ、直営の校舎を何店舗も増やせるほどの資金力があるわけではありません。そこで、学習塾運営のノウハウをフランチャイズ化することで投資を抑えながら事業拡大を狙いたいのですが気をつけることはありますか?
学習塾経営戦略室


フランチャイズ化は、ご相談者様がおっしゃるように、投資を抑えながら事業を拡大する上では、確かに有力な手段です。

しかしながら、当たり前の話ではありますが、フランチャイズ化を実現するには「余分にお金を払ってでもそのノウハウを知りたい、ブランドを貸して欲しい」という人が一定数以上必要になります。

ご相談では、直営の校舎を何店舗も増やせるほどの資金力があるわけではないとのことでしたが、フランチャイズの校舎にとって、本部の経営状況は死活問題。まずは本部および直営校舎の経営をしっかりと安定させ足元を固めるということを大前提とした上で、以下をご参考にしてください。

1.ノウハウは再現可能なレベルで言語化されているか

フランチャイズを実行する上で最も重要になるのがマニュアルの存在ですが、このマニュアルは、誰が見ても再現可能なレベルまで言語化されている必要があります。

例えば、「子どもたちが100点を取ったら褒めましょう」という表現では、マニュアルとして不十分です。なぜなら、人により子どもの褒め方が異なるからです。100点の子どもに対し花丸をつける人がいれば、ご褒美としてシールを貼ったりスタンプを押したりする人もいるかもしれませんよね。

では、「子どもたちが100点を取ったら、採点欄の横に『よくできました』もしくは『この調子で頑張ろう』のいずれかのコメントを書きましょう」と書いてあればどうでしょうか。これだと、人による褒めかたの違いはだいぶ解消されそうですよね。

また、学習塾のフランチャイズ化に必要なのは、何も指導法や教材など教育に関するノウハウだけではありません。むしろもっと期待されることは、出店計画の立て方や集客など、「経営」という側面での知見です。これらもまた、(経験・勘・度胸だけに頼るのではなく)再現可能なレベルまで言葉に落とし、しっかりとマニュアル化しておく必要があります。

2.ブランドのクオリティーを一定に保つための仕組みがちゃんと確立できているのか

フランチャイズのメリットとして、自己資金の投資を抑えることができるのと同時に、スピード感を持って事業拡大できるという点が挙げられます。

ただし、スピード感を持って事業拡大できるということは、言い換えれば、急激に校舎が増えるということ。そして、当たり前の話ですが、校舎が増えれば増えるほど、また、そのスピードが速ければ速いほど、ブランドのクオリティを一定に保ちながらグループ全体を統率するということが難しくなります。

しかしながら、お子さんを学習塾に通わせる親御さんにとって、その塾が直営の校舎であるかフランチャイズ加盟の校舎であるかは全く関係のないことです。たとえ、たくさんある校舎のうちたった1校だけであったとしても、著しくブランドを毀損するような行為があれば、直営校舎および本部もろとも、グループ全体の評判を落とすことに繋がりかねません。

そのため、拡大の規模や速度によっては、例えば定期的に各校舎を巡回し、ちゃんとマニュアル通り塾経営がなされているのか確認するエリアマネジャーを育て、設置する、与信も含め、ブランドを毀損しない人物を見極めるためのフランチャイジー採用基準を作成する、各校舎からのフィードバック制度の整備を行うなど、これまでの塾経営にはなかった、ブランド維持のための強力なコントロールの仕組みを確立する必要があります

3.加盟校舎どうしの競争は起きていないか

通信教育や衛星放送によらないで運営される学習塾は一般的に、規模の経済(大量生産などスケールメリットを生かした収益向上)よりも密度の経済(一定エリアに集中して事業展開することで実現する収益向上 )が働きやすい事業形態であると言われています。

しかし、 だからといって無計画に同エリア内に複数校舎を展開することは、あまり好ましい施策であるとは言えません。

例えば、ご相談では大阪全域に校舎を増やしたいとのことでしたが、もし梅田エリアでいきなりいくつも同じブランドで新しい学習塾ができるとどうなるでしょう。

ただでさえ少子化で子どもが少ないこの時代、同系列であるにも関わらず、生徒を奪い合うというカニバリゼーションが起きることは目に見えてますね。また、グループ内のカニバリは、フランチャイズ加盟校舎が本部に不信感を抱く要因にもなりえます。どうしても同じエリア内に複数の校舎を展開したいというときは、ちゃんと住み分けができるのか、事前に綿密な調査をした上で募集をかける必要があるといえます。

今回ご相談いただいたように、効率的に事業拡大をしたいということであれば、フランチャイズ加盟校舎に対し、違約金など法的なことも含め自由を与えれば与えるほど、門戸は開かれやすくなります。しかしながら、上記でもお話ししたように、自由を与えすぎると、今度はブランドの維持が難しくなるというリスクを抱えることになってしまうわけです。門戸開放とブランドの維持、両者のバランスを上手くとることが、フランチャイズ成功の重要な鍵になるのではないでしょうか。