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モデレーター視点のアイスブレイク活用法


前回、アイスブレイクで使う具体的な質問例を挙げました。アイスブレイクは対象者に本音を話してもらうためのインタビューにおいて重要な部分だと書きましたが、今回はもう少しモデレーターという立場から私の思うアイスブレイクの重要性をお伝えしたいと思います。

モデレーターのインタビュー中の力の入れどころというのは、毎回の内容によって変わってくるのですが、どんなインタビューにおいても私が大事にしている時間はこのアイスブレイクです。

この間に相手の緊張をほぐすのはもちろんですが、私はあることにアイスブレイクの時間を活用しています。それは、相手の話し方や表情、声のトーンなどを観察し、感情の表現の仕方や話の得意・不得意など、ざっくりとしたその人の性格や傾向をつかんでいくことです。

通常アイスブレイクは 5 – 10 分のとても短い時間で行いますが、ではなぜその限られた時間で性格や傾向をつかむことが必要なのでしょうか。ここで相手の性格や傾向を理解しておくことには、大きく 2 つの目的があります。

1 つめは、ここで把握した対象者の特徴をもとに、私自身の話し方や質問の仕方を相手が話しやすいようにカスタマイズしていくためです。

これは特に 1 対 1 のインタビューで本音を話していただくための方法の 1 つですが、例えば、話のテンポが速い方には相手のペースに合わせてサクサクと質問を投げかけていき、相槌もノリツッコミのような形でリズムよく進めていくことで、その方にとって話しやすい環境を作っていきます。一方、ゆっくりとお話しされる方に同じように接すれば、びっくりされるか、不快感を示して黙りこんでしまう可能性もあるでしょう。そういう方の場合は、話すペースを少し遅めにし、相槌は落ち着いたトーンでうなずきは深めに、など調整していきます。他にも、論理的に話される方には質問を簡潔にわかりやすく伝えることや、イメージで話をされるタイプの方には、私たちがそのイメージを理解できるよう具体的な言葉で表現するように深堀りしていくなど、モデレーターの話し方や質問の仕方を相手にあわせてカスタマイズしていきます。

本題に入る前のアイスブレイクでできるだけ相手の特徴をつかみ、インタビュー中の自分の話し方に反映していく。アイスブレイクは、モデレーターの仕事の一つでもある消費者が気持ちよく快適に話せる環境を整えるための情報源として欠かせない時間なのです。

アイスブレイクで相手の性格や傾向を理解する2つ目の目的は、ここで把握した相手の特徴、特に感情表現の特徴を、インタビュー中に見せるアイディアに対する反応を正しく判断するための基準として使うためです。

アイディアを見せたときにその場の反応だけで判断してしまうと、強いアイディアなのかそうでないのか誤って理解することになりかねません。というのも、例えば A さんも B さんもあるアイディアの「好き度」が 50 だったときに、A さんはまるで「好き度」が 100 のように表現する。一方で B さんは言葉にしたときには「好き度」が 25 のように聞こえる。人によって感情表現の仕方は様々なので、その判断には細心の注意を払わなくてはなりません。ここで正しい判断ができるかどうかは、アイスブレイクの段階で相手の感情表現の仕方をどれだけ把握しているかに影響してきます。

アイスブレイクの段階で、A さんは表現するのが得意でリアクションも大きい傾向があると把握しておく、B さんは口数が少なく話し方のトーンも落ち着いていて感情の起伏があまりなさそうだ、など基準となる感情表現の特徴を理解しておきます。そして、アイディアを見せたときにその基準と比べて感情がどれくらいのレベルで動いたのかを注意深く観察する。真意を完璧に見抜くのは難しいですが、その人の表現の基準を事前に理解しておくことで、A さんはこのアイディアがとても好きそうに聞こえるけどそこまでではないのかも…、B さんの場合は、反応が薄いように見えるが、もしかしたら結構好きな部分があったかもしれないのでもう少し掘り下げてみよう、など考えながら質問を構成していき、チームが正しい判断へと近づけていくようにしなければなりません。インタビュー中に消費者が見せる反応を正しく判断しながらインタビューを進めていくために、アイスブレイクで得た情報はモデレーターにとって貴重な判断基準になるのです。

アイスブレイクは単なるインタビューの導入部分だと思われがちですが、見方によってはインタビューの成功を左右する重要な時間になります。ここでつかんだ相手の性格や傾向は、インタビューを進める上でとても貴重な情報になってくるのです。より深い消費者理解につながる可能性をもつアイスブレイクの時間を、貴重な情報の源だととらえて最大限に活用してみてはいかがでしょうか。