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消費者は、なんだかんだ合理的に行動している


僕が学んだグラスゴー大学というスコットランドの大学の出身者に、アダム・スミスという哲学者・経済学者がいます。『諸国民の富の性質と原因の研究』、通称『国富論』という著作で有名なアダム・スミスは、「すべての人間は経済的利益を最大化するように行動する」、というホモ・エコノミクスの概念を作り上げ、経済学の発展に大いに寄与したと言われています。

マーケティングを考える上でも重要な概念である「合理性」、今回のコラムでは、その「合理性」に注目してみようと思います。

規則的な行動をする消費者

近年のB2Cマーケティング界隈では、人間の合理性はことごとく否定されています。そりゃそうですよね、人間は感情を持ちますし、気分によって行動も変わってくる、非常に柔軟な生き物です。行動経済学の隆盛も手伝ってか、「人間は合理的である」なんて言うと、この人大丈夫だろうか、という目で見られるのではないかと思います。

でも、なんだかんだ人間って、規則的な行動を取っているものなんですよね。その一例として、下の図を見てください。

Double Jeopardy

Double Jeopardy

これは弊社がよく援用するDouble Jeopardyという法則について紹介したスライドです。簡単に説明すると、Penetration(浸透率)と、Purchase Frequency(購入頻度)には正の相関があるよ、という法則です(もっというと、両者の間には因果関係があるとさえ言われています)。さまざまなカテゴリー、さまざまな国で成立することが多くの論文で示されています。

もし消費者が規則的に行動しないとしたら、なぜこのような法則がある程度の普遍性をもって成立するのでしょうか。個人的にはちょっと考えづらいように思います。そして、もし消費者がある特定の規則にのっとって行動をしているのであれば、その行動にはある一定の因果律が存在していると仮定することは、自然なように思います。

ホモ・エコノミクスと消費者

さて、お気付きの通り、僕は「合理的」という言葉を「規則的」という言葉にしれっと置き換えて例示しました。正直なところ、2つの言葉の違いを上手に説明することはできません。非常に似た概念だと考えていますが、なぜだか後者のほうがハラオチ感がある、そんな気がして「規則的」という言葉を選びました。少なくとも、人間がある程度規則的に行動するとすれば、それは何らかの論理が存在し、何らかの合理がそこに存在するのではないかと思います。

ホモ・エコノミクスは、自身で選択肢をすべて理解していて、それぞれの選択をした際の影響もわかっていて、さらには一切ぶれない一貫した価値基準をもっているというヤバイ人を仮定しているので、そのレベルでの合理性を持ち合わせている人はいないでしょう。ですが、それでも僕は、なんだかんだ消費者は合理的であると考えています。

その「ヤバイ人」(=ホモ・エコノミクス)と消費者はどんな違いがあるのでしょうか。それをまとめたのが、下のスライドです。

ホモ・エコノミクスはヤバイ人

ホモ・エコノミクスはヤバイ人

ホモ・エコノミクスは、ヤバイ人です。全情報を手にし、影響も適切に把握する、そしてぶれない。でも、消費者は違います。本人のもつ情報は限定的ですし、選択行動の結果の影響も正しく理解できているとは限りません。そして何より、ぶれます。経済的利益のみを追求して行動するわけではなく、さまざまな気分で行動が変わってしまうのです。何を客観的と呼ぶかは議論の余地があるかもしれませんが、客観的に見て合理的であるようには到底思えないのが消費者です。

消費者は、ホモ・エコノミクスと比べて客観的には合理的ではなさそうです。ですが、僕は消費者はとても合理的に行動する傾向があると考えます。言い換えると、消費者は、自分自身の論理にしたがって、非常に合理的に考動していると考えます。自分自身の論理というのは非常に主観的です。また、持っている情報が変化すれば、当然合理的な行動も変わってくるのです。意思決定基準も、時に異なる。ある時は利益を考え、ある時は見栄を考える。でも、その意思決定基準にしたがって合理的な行動を取っている、と考えるのです。

消費者は、自分自身の論理にしたがって、非常に合理的に行動している。

マーケティング活動をしていく過程において、この考え方はとても重要です。ホジョセンは、消費者理解をマーケティング活動の軸に置きますが、消費者を理解するということは、すなわち消費者のもつ論理を理解し、消費者のもつ合理性を理解することです。それは決して、マーケターの論理に基づいた視点では理解ができない、消費者の主観的な論理です。

そして、消費者の主観的な論理は、ひとりひとり細かく見れば異なりますが、ある程度のパターンは存在します。だからこそ、Double Jeopardyのような法則が成立しますし、消費者行動をモデル化してプランニングをすることができるわけです。消費者行動をモデル化してプランニングができるということは、再現可能な、運任せではないマーケティングができるということでもあります。

みなさんは、消費者の行動の説明ができるでしょうか? 消費者の論理を正しく理解することができれば、購買行動にかぎらず、さまざまな消費者行動に対してハラオチすることができます。その状態を、「消費者を理解した」というべきです。消費者の話を聞くだけではなく、消費者を理解してはじめて、ビジネスを伸ばすという結果に直結するマーケティング・リサーチになる、ということもできますね。