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ブランディング10のステップ


近年、地域資源活用を狙った地域ブランド作りや、地域企業によるブランド発信が増えてきています。そして同時に、ブランドを作ったつもりでも、名前をつけただけであるケースや、ロゴ・ビジュアルデザインを作成しただけにとどまっているケースもたいへん多く見受けられ、本当の意味でのブランド作りに到達できないことも多々あるように思います。

僕は年間数十億円使用するブランド作りから、債務超過企業におけるお金の使えないブランド作りまで幅広く携わってきました。そして、お金の余裕がブランド作りに与える影響はごく一部であって、正しい道を踏めばお金を使わなくてもブランドを作っていくことができると確信しています。このブログ記事では、強いブランドを育成するための10のステップを紹介できれば、と思います。

ブランド作りとは

正しく育成されたブランドは商品やサービスに対する価格弾力性を逓減し、生活者の心理的なスイッチングコストを高めることによって中長期的に顧客を保持し続けることを可能にしてくれます。

ブランドは、独善的に作られるものではありません。ブランドというのは生活者・消費者(以下生活者としてまとめてしまいます)が連想するイメージや効能、心理的な近さや情緒的な結びつきによって形成されるものです(図1。ケラー CBBE – Customer-Based Brand Equity pyramid)。

図1 ケラー CBBE – Customer-Based Brand Equity pyramid

図1 ケラー CBBE – Customer-Based Brand Equity pyramid

そしてブランド作りというのは、生活者の頭の中にあるブランド像と自分たちが「こうありたい!」というブランド像を一致させることこそがブランド作りだと言えるでしょう(図2)。その観点で、以下の10ステップをお読みいただければ幸いです。

図2 ブランド像の一致

図2 ブランド像の一致

① 現時点で生活者が連想するブランド像を理解する

ブランドの作り手側が「うちのブランドはこういうブランドだ」と一方的に宣言したとしても、それが生活者の認識と大きくズレているのであれば、現時点におけるそのブランドは、本質的に生活者の頭の中にあるような存在なのです。誤解されているとか伝わっていないとか、はたまたその発言をしている人は異常だ、と判断して現実を直視しない企業もありますが、これではブランドを適切に構築していくことはできません。生活者がそのように認識しているブランドこそが自分たちのブランドの現在の姿なのだと認めることからブランド作りはスタートします。

このステップでは、アンケートなどの量的なものであれ、インタビューのような質的なものであれ、生活者調査を行うことが理想です。次以降のステップのベースとなる情報ですので、可能な限り調査を行うようにしましょう。社内用でリスクが低い調査ですから、サンプルサイズを大きくしなくても問題ありません。最近では10〜20万円程度で100〜200サンプル取得することができます。財務上調査を行うことができない場合、実際に商品やサービスが取引されている現場を見たり、社内でもっとも顧客に近いポジションの人に話を聞いたりして対応するとよいでしょう。

② 生活者に対するブランドの「約束」を定義する

そのブランドを使用する(サービスを受ける、などなど)ことを通じて、生活者に何をもたらすのか(=「約束」するのか)を定義することが大切です。たとえば、BMWは一時期「駆け抜ける歓び」をブランドとして謳っていました。BMWを運転することで、さまざまな「歓び」を生活者に約束したメッセージとして記憶されている方も多いのではないでしょうか。

このステップでは、競合とのポジショニングを考えて「約束」を探しだすこともありますが、一般的には社内のプライドや想いを掘り下げていくのが良いでしょう。僕が関わったある小売店のケースでは、取締役・役員の想いとともに、最古参のスタッフが大事にしているプライドなどをブランドの約束としてまとめ上げました。

約束を定義するにあたって、それは十分に具体的でなければなりませんし、同時に驚かれるくらいにエッジの効いたものでなければなりません。ブランドは目立ってナンボです。できあがった約束を目にした生活者にとって十分に目新しいものかどうか、じっくりと検討してください。

③ ブランドの「約束」が守られる理由を定義する

約束をしたからには、それを守らなければなりません。なぜその「約束」を守ってもらえるのか、生活者に納得してもらえなければブランドとして信用してもらうことは不可能です。こだわりの原材料なのか、優れた伝統技術なのか、それとも先進的なイノベーションなのか、地域のブランド作りだと地域にまつわるストーリーもこれにあたります。どうして約束を守ることができるのかをしっかりと定義し、それらは十分に説得力があり競合に対して優位性があるのかをしっかりと検討しましょう。これは、ステップ6のコミュニケーションプランの礎となりますから、妥協することなく議論を重ねてください。

④ ブランドの性格を定義する

ブランドにも性格(キャラクター設定)が必要です。元気いっぱいの若々しいブランド、クールで男性的な大人っぽいブランド、冗談好きの明るいブランド、はたまた誠実で真面目なブランド、といったものです。

この設定も⑥のコミュニケーションプランで大活躍します。トーン&マナー、広告用語で、広告や制作物から醸し出される雰囲気や世界観のことを表す言葉です。ブランドの雰囲気に大きく関わってくるところですから、ブランドの「約束」とマッチする性格を見つけ出してください。

これを定義していないがために、作るたびにチラシやパンフレットの雰囲気が変わってしまうブランドや、ウェブサイトとパッケージ、広告宣伝の世界観がバラバラになってしまうブランドをよく見かけます。

⑤ ターゲットとなる生活者を定義する

万人に熱狂的に愛されるブランドはありません。ブランドというものは、必ず一部のファンに支えられて成り立つものです。全員から好かれようと考えると、結果として誰からも嫌われはしないが好かれもしないブランドができあがってしまいます。このステップではターゲットとなる生活者を可能な限り具体的に、どういう価値観をもっているどういうライフスタイルの人なのかを設定しましょう。

⑥では、ここで設定したターゲット生活者に受け入れられるようなコミュニケーションプランを作っていくことになります。理想を言えば、このステップでも生活者調査を行うべきです。ブランドのターゲットとなる生活者がどういう人なのか、頭のなかに思い浮かべられるくらいまで知り尽くすことができれば、ブランドは育っていくに違いありません。もし財務上の都合で調査が行えない場合は、チームメンバーで膝を突き合わせてターゲットとなる生活者像を、年齢・性別・価値観・ライフスタイル・重視すること・好きなこと・嫌いなことなどなど、さまざまな観点から人となりを作り上げていってください。

繰り返しますが、万人に好かれようとすることはブランドにとって致命的となるミスです。決してこの罠に引っかかることのないよう、「ひとりのターゲット」を設定してください。大丈夫です。ひとりのターゲットから大いに愛してもらうことができれば、同様に愛してくれる生活者はたくさんいます。

⑥ 理想と現実のギャップを埋めるコミュニケーションプランを考える

①では現時点での生活者のブランド認識を理解し、②でブランドとしての理想的な状態を「約束」という形で定義しました。その2つには大きなギャップがあったのではないかと思います。このギャップをどのようにして埋めていくのか、そのために必要なコミュニケーションは何かを検討するのがこのステップになります。

そのために、ブランドと生活者の接点を洗い出すことから始めましょう。ウェブサイト、店頭、雑誌、TVCM、そして商品そのものも重要な接点のひとつです。これら接点において、ブランドの約束を納得し、好きになってもらう活動がコミュニケーションプランとなります。そしてもちろん、コミュニケーションの世界観はブランドの性格に応じたものになりますし、メッセージはターゲット生活者の心に響くものにする必要があります。しっかりと納得してもらうための根拠を伝えることも必要となってきます。

ブランド作りとしてロゴデザインだけを行うケースも散見されますが、ロゴも生活者との接点のひとつでしかありません。また、①〜⑤を経ることなくいきなりコミュニケーションプランに入ってしまうケースもよく見かけます。これらはブランド作りの典型的な失敗ケースです。同じ轍を踏まないようにしましょう。

⑦ ブランドの一貫性を担保する

ブランドは一貫していなければなりません。その時その時で違う約束をしたり、違う性格になったり、違うメッセージを出していたら信用されることもなく、また認識が刷り込まれることもなく生活者を混乱させるだけになるでしょう。②〜⑤で定義したことに沿った活動を行なっているかどうかをモニタリングする必要があります。

これはブランド作りにおいて最も大切なことだと言えるでしょう。ブランド作りに失敗する大多数はこのステップで躓いているようにも思います。目先の利益に目を奪われて、そのブランド「らしくない」ことを行なってしまったり、そのブランドのターゲットではない人に媚を売ったりを繰り返してブランド価値を毀損させているケースを頻繁に目にします。たとえば、プロフェッショナルなサービスを「約束」としている専門小売店が、突然価格訴求を繰り返し割引で売り始めると生活者は「約束」の履行に疑問を抱くようになります。結果としてターゲットの生活者はそのブランドから離れていくことになるでしょう。失った信用を取り戻すことは、並大抵の努力ではありません。

⑧ 十分な権限を与えられたブランドの管理者をおく

これは⑦を実現するための社内組織の整備にあたります。ブランドの管理者は社長でもいいですし、部長でも課長でも構いません。重要なことは、ブランドコミュニケーションの一貫性を担保できる十分な権限が与えられていることです。つまり、会社がブランド「らしくない」ことをしようとした際に止められる権限を付与した管理者を育成する必要があります。

リーダーシップの強い社長が、鶴の一声でブランド「らしくない」ことをやろうとするケースをよく見かけます。しかし、ブランドの一貫性のほうが社長の一声よりもより重要であることを認識しなければなりません。社長は100年在籍しませんが、ブランドは100年生き残る可能性があるのです。社長がなんと言おうがブランド価値を毀損する行動に対してNO!を突きつけられる管理者を、社長がその権限とともに与えることができるか。そして管理者がその重圧に負けずに規律的に振る舞えるかは、ブランドの成長にとって非常に重要な一歩です。

⑨ 社内・地域内の人のブランド理解を深める

これも⑦の一貫性を実現するための手段となります。⑥で生活者との接点をリストアップしましたが、忘れがちな接点として「社内の人間」「地域の住人」があります。制作物といったモノのコミュニケーション内容は⑧の管理者で対応できるのですが、一人ひとりの人間のコミュニケーション内容までコントロールはできません。だからこそ、社内の人間や地域の住人が、ブランドに対して一貫性のあるコミュニケーションができるよう、理解を深め共感している必要がでてきます。

また重要なこととして、中小企業や地域ブランドはお金がない、ということが挙げられます。お金がないと、広告宣伝をはじめとする外向きのコミュニケーションには限度があります。したがって、内向きのコミュニケーションを通じてブランド伝道師となった従業員や地域の人々、団体がそれぞれブランドの価値を体現していく必要がでてきます。その時、バラバラだったら残念なことになる、というのは容易に想像できるでしょう。

⑩ PDCAサイクルを確立する

ブランド作りは1年やそこらでできるものではありません。ブランドは5年、10年と長期的に育てていくものです。したがって、少なくとも1年に1回、理想と現実のギャップが縮まったのか、実施したコミュニケーションプランは成功だったのか失敗だったのか、といったレビューを行い、次年度のプランに反映させることが肝心です。そのためには、⑦の時に、それぞれのコミュニケーションによって、ブランド連想の何が高まるのか、という仮説を立てることも必要ですし、しっかりとそれをレビューするというフェアな姿勢も重要となってきます。PDまで行なっていてもCAを行なっていない企業もよく見かけます。あらかじめPDCAのサイクルを予定したブランド作りを強くおすすめします。

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ホジョセンは、小売店やインターネットサービス企業のコーポレートブランディング、消費財や耐久消費財のプロダクトブランディング、サービスのブランディングなど、幅広い経験を持っています。デザインや見た目の変更にとどまらない、内向きのインターナルブランディングと外向きのエクスターナルブランディングを掛けあわせたブランドづくりを進めていきたい企業さまからのお問い合わせをお待ちしております!