ページ読み込み中

マクドナルドの 60 秒チャレンジキャンペーンを考える


ネットを中心に酷評を受けているマクドナルドの 60 秒キャンペーン。この戦略についてマーケティング的に考えてみたいと思います。

まずはじめに、マクドナルドはなんでこんなことをやろうと考えたのか。広報のコメントはあくまで外向けでしょうから、マクドナルドとしての意図を推測する必要がありそうです。

マクドナルドの戦略は?

 

マクドナルドのビジネスは非常に単純で、

客数 × 単価

で表現されます。単価に関しては散々いじってきた歴史があるのですが、今回のキャンペーンは「客数」にフォーカスを置いたものだったと考えられます。

マクドナルドにとって客数を伸ばすことは、ある制限下での課題となります。つまり、各店舗のキャパシティに限界があるということです。したがって、稼働率が飽和している状態で客数を伸ばしたいのであれば、1)店内客の回転率を上げるか、2)お持ち帰りの客を増やすか、の 2 択に行き着くでしょう。実は2)は1)の手段でしかないのですけれども。

店内客の回転率を上げることは、店内で食べるお客さんの滞在時間を短くすることで達成されます。閑散時間帯の回転率を上げたところで得られる利益はわずかですから、繁忙時間帯の回転率を上げたくなることは自然の流れだといえると思います。

滞在時間は、注文前の時間+注文中の時間+注文後の時間、で表現されます。そして注文前の時間は、自分の前にならんでいる人たちの注文中の時間の総和で近似されます。つまり、自分を含め並んでいる人の注文中の時間の総和+注文後の時間が、おおよその滞在時間になると考えて良いでしょう。お持ち帰りの客は、注文後の時間が 0 なので、お持ち帰りの客が増えれば増えるほど回転率が上がることになります。したがって、マクドナルドにとってお持ち帰りのお客さんは非常に重要なお客さんなので、もう少しお持ち帰りたくなるようなメリットを提供するとか考えたほうがいいよ、というのは余談です。

コントロールできることとコントロールできないこと

注文中の時間と注文後の時間、どちらがマクドナルドという企業としてコントロールできるのか。この観点で考えると、確実に注文中の時間のほうがコントロールしやすい領域です。

もちろん、注文後の時間を短くするために快適ではない椅子にしたり、立ち喰いスペースを作ったりといった工夫はしているのでしょうが、やはり注文中の時間における店舗オペレーションが占める割合は相当高いため、会社としてコントロールするのであれば注文中の時間、と考えるのは自然だと思われます。

今回のマクドナルドの 60 秒キャンペーンは、自分でコントロールできる注文中の時間を短くすることで客の滞在時間を減少させ、店舗のキャパをフル活用できるランチタイムの回転率を上げよう、という意図に基づいたものだと想像出来ます。

マクドナルドはメニューの刷新を先日行い、こちらも不評だったようですが、これも迷う時間をなくすことで注文中の時間の短縮を狙ったものだと考えられます。こちらは注文中の時間であってもコントロールしづらいエリアですので、効果は見えにくいのかもしれません。

全社的に行えること

マクドナルドはチェーン店です。各店舗、立地から面積から千差万別です。本来、客数を増やすためには座席数を増やすよう改装したり、という手段も考えられるのですが、それは店舗単位の施策となってしまい、全社的に効果を出すことは不可能です(もしくは、大量の資金が必要です)。

その点、60 秒で提供します、というオペレーションは店舗条件に係わらず行うことのできる施策です。1 店舗で 10% の効果がある施策よりも、全店で 1% の効果がある施策のほうが重要なのは、こういった多店舗展開を行なっている企業では重要な視点となります。

まとめると、

マクドナルドとしては、

売上を上げたい

客席稼働率の高いランチタイムの回転率を上げよう

滞在時間を短くしよう

コントロールできるところにリソースを投下しよう

注文中のオペレーションを効率化しよう

60 秒で出しましょう!

といった意図だったのではないかと思います。

余談ですが、60 秒で出すことを大々的に宣伝することで、「滞在時間が非常に短い忙しくて食事に時間をかけられない顧客」という喉から手が出るほど欲しい優良顧客を取り込むことも考えていたと思います。

60 秒チャレンジの反省点

ですが、やはり反省すべき点はあるように思います。以下(も)、全て推測です。

第一に、60 秒で提供するというメッセージから想起される「サービスの質の低下」というイメージのコントロールに失敗したこと。想像するに、60 秒だろうが 3 分だろうが、ハンバーガーの雑さはあまり変わらなかったのではないかと思います。ですが、60 秒というのを全面に出し過ぎることによって、今まで気にならなかった雑さ、サービスの質に対して顧客が注意を向けるようになってしまったことは、今後の反省材料ではないかと思います。

第二に、注文中の時間が減ることによって全体の滞在時間が短くなる、という仮説が正しかったのか、という点です。ランチタイムにおける店舗内の滞在時間は、実は昼休みの終わる時刻によって決定されるのであれば、注文中の時間を減らしても全体の滞在時間は減らないことになってしまいます。まあ、そもそもこの仮説自体をこのブログが立てたわけで、元も子もない話でもあるわけですが。

第三に、60 秒で提供するために必死になっている店員さんを見た時に、顧客が罪悪感を持つケースがある点を無視していた点です。60 秒で提供されてもされなくても、「かわいそうなことをした」と感じさせてしまえば、I’m lovin’ it という感情は湧かない、つまり、ブランドイメージを壊しかねないキャンペーンだったと言えるように思います。

今後

今まで価格を前面に出すことが多かったマクドナルドが、回転率を上げる施策に本腰を入れ始めたのは非常に興味深い転換です。そしてこの回転率という考え方は、土地が無尽蔵にある米国本社にはなかなか理解されない領域だと思います。

日本マクドナルドがどこまでマーケティングや戦略立案の自由を与えられているのかわかりませんが、ぜひとも頑張って欲しいと思うチャレンジでありました。

以上、お昼時のマクドナルドからお送りしました。スイマセン。